580円のトンカツ定食に思う「こういうのでいいよね」感(代田橋・クラウン)

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いいかい学生さん。トンカツをな、
トンカツをいつでも
食えるくらいになりなよ。
それが、人間
えら過ぎもしない
貧乏過ぎもしない、
ちょうど
いいくらいって
とこなんだ。
(美味しんぼ)

長年ネットを回っていると、2度や3度は読んだことがあるこの一文。我慢前提の選択肢は人を病ませてリバウンドを起こすことを考えると、まさに自己をポジティブに成長させるための至言というべきものです。さあ、みんなでトンカツ食おうぜ。

ところでトンカツといっても、いろいろな価格帯のメニューがあります。「いつでも食えるくらい」とはいったいどれくらいの価格帯なのでしょうか。原文が生まれたのは1980年代。さらに物語はそこから30年を遡る1950年代を示しています。ネット上の調査結果を見ると、1000円代とも3000-4009円くらいとも言われており、なるほど1食4000円を躊躇なく払えるようになれと。できるかーい。特別な気持ちを満たすご馳走ご飯ならまだしも、高いわ!

だから僕は、何気なく「今日はトンカツ食うかな」というときは、杉並区和泉のクラウンに足を向けます。

だってここのトンカツ定食、580円なんだもの。

しかも学食的な、あらかじめ揚げていたトンカツではありません。注文が入る都度、ご主人が冷蔵庫からロース肉を取り出し、衣をつけてじっくりと揚げていく。レモンの味と香りがある水を飲みながら待っていると、できました。

トンカツ定食と、カニクリームコロッケ(120円)です。

1000円超え、ましてや4000円を越えるようなトンカツと比べるとシンプルでシュッとした出立ちですが、これがまあ旨い。ザクリと硬めに揚げられた衣を噛み締めると、薄手のロースから豚の旨味甘味がじわりと滲み出てくる。うまいなー。1000円以下のトンカツ定食でこの味が楽しめるのは奇跡みたいなものでしょう。

過去に豚肉の卸業をしていたご主人。いまでも伝手があり、安くとも良質な豚肉が仕入れられるそう。お話を聞くと「昔と違って、上物といえる豚の基準が変わっちゃったんだよね。どうしても今の豚は硬いんだ」と、移り変わってきた精肉事情のことまで教えてくれます。物静かな雰囲気を持っていますが、実はおしゃべり好き。地元のおじーちゃんおばーちゃんたちも、ランチがてらご主人と奥さんとのトークの時間を楽しんでいます。

昔から変わらないであろう、ホッとした味を嗜み、時間を過ごせること。こういうのもちょうどいいくらいだなって、こういうのでいいよねと感じますね。

ところでトッピングした120円のカニクリームコロッケが、スーパーの惣菜価格のカニクリームコロッケがめっちゃ旨くてびっくりした。ちゃんとカニっぽさあるよこれ。

とんかつクラウン
03-3328-0455
東京都杉並区和泉1-13-8
https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131808/13128674/