人が消えた雷門で「逆まわりの世界」を求め煮込みを食べながら過去を待つ

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2年前、浅草雷門で賑やかさに体力を吸われ、群像のひとりとなることを拒絶する自分がいたにもかかわらず、半年前はすでに人が姿を隠しつつあり、先日は過度に過疎なオンラインポリゴン世界のポータルかのごとくアバターの姿はまばら。

どんなに人が訪れなくとも、カウンターでいつか訪れる人を待ち続ける人がいて、メシ屋もしかり。

『正ちゃん』(東京都台東区浅草2-7-13)は酒と「延々と煮込み続けた煮込み」がうまい。うまいが濃い、うまいがこってり、うまいが人を選ぶ。が、人を選ぶ煮込みだってありがたい。

ファーストオーダーは熱燗と煮込み。セカンドオーダーは熱燗、ネクストオーダーは熱燗。延々と熱燗。煮込みの持ついろんな意味での質量が極めて高いので1皿でOK。あとは延々と熱燗。

客が少なくとも、忙しくなくとも、ときおりオーダーを忘れるのはアノマリーなのか。

これ、熱々の白飯に乗せたらバツグンにウマいんじゃあないか? と思ったら『牛めし』なるものがあった。次はそれにしよう。

そのときは群像のなかで食べるのもいいかも。ノイズがあってこそのうまいメシと酒。過去を振り返り「昔はよかった」と思う事は好きではないが、熱燗を飲みつつ、逆まわりの世界で過去を待つ自分がいたのも事実だなあ。